墨攻を見た

 しばらく前に映画館へ“墨攻”を観に行った。
 痛快だけど遣る瀬無い物語だ。敵がまんまと引っかかった火計で燃えさかる敵兵を目の当たりにして主人公は悩み、護るべき味方は謀略を巡らせる。そして自らの奇計が悲しいラストの引き金になる。
 イラク戦争で兵役拒否した日系三世アメリカ人の記事を読んで、映画の中で出てきた非攻と兼愛という言葉について考えた。記事を引用した各日記は賛否両論だったけど、しかし例えば一兵卒が上官命令だからといって、筋の通らない理由だと知っていても戦闘──他人を殺すこと──に加担するというのは完全に思考を捨てることではないか。それは人間かどうかすら怪しいんじゃないか。僕はこの兵役拒否者の考え方に非常に共感した。誰だって自分の信じる正しいことに向かって力を使いたい。非攻とはそういうことだと思う。許可された殺人を認めない。兼愛は相手を知り、敵と味方の色分けなど馬鹿げた事だという思想。理想主義・夢見がち・現実逃避と言われることもあるかもしれない。しかし戦い続けて幸せになった人なんているのだろうか。
 少し前に旅行に行って、レバノンで戦火をかすめ、ようやくあの地域の歴史、中東戦争というものがどういう経緯だったのかを知った。それまでイスラエルについては「さんざん迫害されてたんだから大目に見てやろうぜ」程度の知識しかなく、知れば知るほど自分の無知を恥じた。墨子の思想の一つに「所染」というものもあるそうだ。「何に学ぶか」という意味らしいが、彼らが学んだ教訓は歪んではいないだろうか?
 そして今日もイスラエルとヒズボラの銃撃戦がニュースで伝えられる。「ヒズボラが先に発砲し、イスラエルが境界を超えて侵入して来たので攻撃したとのことです」。淡々とニュースは事実を伝えるがしかし、結局イスラエルが境界を越えたのか越えていないのかは明らかにされないままだ。
 「テロ国家から国民を守る」という題目から余りにもかけ離れた前線で命を懸けて戦い続ける兵士の心中で、どこまでそれは意味を持つだろうか。ファルージャを封鎖しての一般市民を含む無差別攻撃を行うアメリカ軍や、海岸で遊ぶパレスチナ人家族へミサイルを打ち込むイスラエル軍は明らかに「自分の国、国民を守る為」から逸脱しているとしか思えない。そしてこれらはすべて上官の命令には絶対服従であることが実行の大きな理由を占めている。
 現在行われている、大国が掲げるバイアスのかかった正義が世界の「悲しいラストの引き金」になるんじゃないか、と思っている。

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墨攻を見た への3件のフィードバック

  1. 244☆ のコメント:

    ほんまにこのままどうなるんだろうっていうニュースしか入ってこんですね。
    自分の知識は本当に薄く、えらそうに語る程ではないけど全くあのアメリカって国はどうなんでしょう。
    北朝鮮に対してもそうじゃけど散々昔同じように好き勝手した事実は棚にあげあの言い分は納得がいきません。
    このままあの国に世界がひっかきまわさせられてしまうんじゃないだろうかと心配です。
    そんなせいというかおかげというかで、大好きだったレイジアゲイストザマシーンが混迷するブッシュ政権に喝を入れる為に復活するという、うれしいニュースが!皮肉です。

  2. もにょ のコメント:

    世界情勢がほんとのところどうなっているのか、全然わからない…。戦争、核、テロって、どうしてそうなるんだろう?いったい誰が何をしたいんだろう?
    戦争映画とか観て、戦争万歳っていう人はいるのかな?
    前からどうしてブッシュが大統領なのか疑問だったんだけども…?
    北朝鮮は一体なんなんだ?
    みんな本当に、戦争よくないよね、やめようよ、核とかテロとかだめだよ、とか思ってるの??
    お国のえらい人たち、思ってるのかなぁ?

  3. junt のコメント:

    244>
    強い武器が増えないに越したことないけどアメリカの場合、相手の頭に銃を突きつけて腹にヒザを入れながら「銃を捨てろ」っていってるような感じ?
    レイジwww
    もにょ>
    えらい人たちは当然考えているだろう。
    しかし最終決定を下す人々が「平和は3の次」くらいにしか思ってないのじゃないのかな。

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